第16回高円宮杯FINAL


・とうとう、決勝進出でございます。ここまでのヴェルディユースは堅いという印象。予選では5−3−2の布陣を敷いて守備的に戦い、カウンターやロングボールで戦うサッカー。福島も高円宮杯でも同様のサッカーで結果を出してきた。 広島には中盤フラット4−4−2という布陣で戦った。ここ数年、ヴェルディユースで採用したことのないサッカー。果たして、この埼玉で2冠達成なるか?ちなみに日本代表ユニフォームを着ると入場料無料だったんだよ。まぐは4着持ってるから 4人分無料・・・って1人で来たんだけどね。

・過去、何度となく議論されてきた戦い。フィスト・オア・ツイスト。遠くガス燈時代から米国で語り継がれる永遠のテーマ・・・・強いのは・・・「部活サッカーかクラブユースか」。今まで15年以上続いてきた戦い、タフネスに差が生じることで部活サッカーに軍配が上がっていた戦い。勢力図は一変している。 札幌は部活サッカーの雄「青森山田高校」、鵬翔高校、滝川第二。予選では前橋商業、鹿児島実業、静岡学園のグループから突破している。対して、ヴェルディユースはクラブユースの雄「サンフレッチェ広島」、ガンバ大阪をやぶっている。果たして、強いのはどっちだ!

埼玉スタジアム2002
ヴェルディユース
VS
コンサドーレ札幌
柴田 峡監督  監督四方田修平
高木 駿34GK  GK塚本祐輝
古川将大15DF  DF小田桐博明
吉田啓祐24DF  DF佐々木健将
坂口達也DF  DF廣中辰哉
三原直樹DF  DF松本壮平
征矢貴裕MF  MF大野翔平
弦巻健人10MF  MF14長沼恭平
奥田大二郎17MF  MF10藤田征也
小林裕紀13MF  MF西 大伍
エルサムニー・オサマ11FW  FW川村賢吾
河野広貴13FW  FW20岡 揚一


・広島戦との違いは高橋大樹にかえてFWの河野がスタメン出場となった。注目は札幌の岡と藤田。果たして、ヴェルディはどういうサッカーを試みるのか。札幌の長所を消すサッカー、リスクを徹底的に排除したサッカー とはどういうものか・・・どれどれ見てみましょう。

     河野    オサマ



裕紀   奥田    弦巻   貴裕
                  
                  
                  
三原   坂口    吉田   マサ


        高木
・前半開始早々、三原からのアーリークロスに中央でオサマがヘッドで競る。前半の攻めのカタチは全部これのみ。左サイドからのアーリークロスをオサマがヘッドで狙う。45分間これのみ、4回ぐらいやったかな。そもそも、三原といえば攻撃的な左サイドバック。タイプで言えば三浦アツ。サイドから積極的なオーバーラップ、攻め上がって縦を突破するか中央に切り替えしてシュートするか。 相手に究極の2択を迫るのがスタイル。今年はそのスタイルを崩し守備にも貢献出来る選手となった。   *でも、まぐは超攻撃的サイドバックの三原が好きです。

・札幌の方がカウンターではあるものの細かく繋ぐ感じ。左サイドを中心に縦パスをテンポよく繋ぐ。ここで藤田あたりが中継に入るとちょっと厄介。サイドを広く使われたりとアイデアも豊富。ヴェルディもプレスが早いので相手を追い詰めたいんだけど、縦パスが2度・3度とつながり始めると少々厄介。決定的なチャンスは作らせていないのだけマシか。ところが、ここで吉田が日本代表の中田浩二ばりのミス。 相手FWが一気にシュートを狙うも外へ。ふぅー、こういう時はミスだけが恐いっす。かつては森本の様にジュニアユースからトップ昇格かと噂されたDF吉田。まだ1年生で182cm、これからもぐんぐん背が伸びるだろうし期待大の大型ストッパー。ヴェルディではどうも背が高い選手は出てこない印象だっただけに貴重な存在だ。   *柴田さんの下ならCBは真っ直ぐ育ってくれそうなので期待。

・技術のヴェルディと言われたが、札幌もなかなか。札幌のMF8番西の中央突破。ボランチの奥田が一対一をかわされてしまい、坂口と吉田の間からシュートもブロック。その後も札幌ペースで試合が続き、藤田もミドルシュートを坂口が体を張ってブロック。今回のヴェルディユースの強さのポイントとして両CBのバランスが非常にいい。坂口を中心としたDFライン。相棒が吉田になろうが、金沢になろうが、笠松になろうが、マサ古川 だろうが誰とでも組める。スイーパーもストッパーも何でもござれ。セカンドボールを拾う事にやたら執着していたが、最近ではCBが本職となったようだ。とにかく、CKの合言葉は「ファーサイド坂口」      *柴田さんサッカーでも唯一のレギュラー。産んでくれてありがとー。

・札幌のMF藤田。非常に見応えのある選手ですね。右サイドを坂口相手にドリブル勝負。相手に体を触れさせない見事なドリブルで突破すると、ゴールラインぎりぎりをドリブルしてマイナスパス。ニアの選手にはボールが合わなかったが、ファーサイドの選手がシュートもDFブロック。いやぁ、本当に守備の際に全員が体を張るね。たとえ、もう間に合わないなという選手でも全力でポジションに帰ってスペースだけでも埋める。 トップの選手なんか、自分のポジションに帰る際に歩いてますからね。たとえ、自分のスペースを使われなくても戻っておく・・・この守備意識だけでも学んでもらいたいなぁ。

・トップに学んでもらいたいのは守備だけじゃないんです。下の布陣に書いておきましたけどね、前半の攻めはほとんど左サイドから。そのサイドの攻撃の凄さは常に縦パスをつなげるシステムにある。 とは言うものの、これってサイド攻撃の常識みたいなもんですけどね。その常識をトップチームがやらんもんだからつい・・・。

河野←←←←  オサマ
↑↑
↑↑
↑↑
裕紀   奥田    裕紀   貴裕
↑↑                
↑↑                  
↑↑                
三原   坂口    吉田   マサ


        高木
・例えば、三原が自陣でボールをもらう → 三原が小林へパス → 小林がボールをためる → 河野が左サイドの裏へ走る → 小林が河野へパス → 河野が左サイドでためる → 河野のスペースへオサマ、弦巻、三原が飛び込む → 河野の裏へ小林も走る →  オサマのスペースへ征矢貴が飛び込む・・・自分達がボールを持つとこのカタチでラストパスまで持っていける。前半はこれだけに終始していたヴェルディユース、さぁ後半はどうする?




   −後半−
     オサマ   弦巻



河野   奥田    三原   貴裕
                  
                  
                  
裕紀   坂口    吉田   マサ


        高木
・後半に動きましたね。札幌も前半のヴェルディを見て、左サイドをケアするだろう。しかし、策士柴田。相手の考えなどお見通しよ。すぐさま、左サイドの三原を中盤に持って行く作戦。中盤でのボール奪取を最優先、サイドを広く使う為にさばく能力の高い三原をボランチへ起用。走りたくてうずうずしている河野を左へ。

・後半7分、右サイドへのボール。ここでタッチラインを割ったかのように見えたが、線審は目の前で確認していても旗はあげなかった。そのまま、右サイドを独走していきグラウンダークロス。GKが弾いたボールをファーサイドに待っていた岡がトラップ。コースをよく見てゴール右下へ流し込みシュート。なんと札幌が先制点をゲット。きっと、森本と国立で決勝を戦った時の人だよね。 しっかりとあの悔しさをさいスタで晴らされてしまった。失点するとすぐに選手交代。河野にかえて征矢智。きっと、プランとして失点したらこう替えようってのがあるのかもね。それにしてもバドンって遅いよなぁ。

     オサマ   智和



弦巻   奥田    三原   貴裕
                  
                  
                  
裕紀   坂口    吉田   マサ


        高木
・たった1日でユースの選手になってしまった河野。走るのが大好き突貫小僧。必ずユースには1人いるんだよね、こういう運動量豊富な選手。それだけじゃなく決定力も抜群の河野はまだ1年生なので期待大。同じく交代した征矢智和も1年生。森本を兄貴と慕うストライカー。タイプ的にも少々かぶる部分がある。

・左サイドから小林裕紀が深いところからセンタリング。ぽわぁ〜んとしたセンタリングをGKが飛び出す・・・しかし、札幌GKが一瞬判断を迷った。行こうか行くまいかを悩んだほんのわずかの瞬間、これがミスとなり失点に繋がる。GKが飛び出してボールをパンチングしようとするもニアでオサマと競ったDFが頭でクリア。その裏にこぼれたボールを征矢智和がヘッドでプッシュ。これで1−1と同点。

・左サイドのコーナーフラッグでボールをキープした征矢智。2人に囲まれているのにビクともしない。その上で2人の間をぶっこ抜いてセンタリングまであげるほど。むむむむむむむむ・・・・・・、森本兄貴!トップで待っててくれぇー。どうせ、あたし達は白い着物か赤い着物か・・・ご一緒させて頂きます。仁義抱きましょ、男の世界。

・中央から征矢智和の素晴らしいスルーパスを通して右サイドの裏を走った征矢貴裕。そのまま、ゴールラインをドリブルで突破して切り替えし。これでDFは完全に横滑り、中を良く見てグラウンダーパス。ここにオサマが突っ込んできてプッシュ。つま先に当たったのでボールが浮いてしまったがGKにとっては意表をつかれた格好。この至近距離でループかい!って思っただろうね、真正面の頭上をふわーっと越えて2−1とヴェルディが 逆転。オサマと言えばストライカータイプ。トップで言えばワシントンと同類のFW。PA内でどっしりと構えてゴールだけを狙う選手だった。しかし、策士柴田の指導では完全にポストプレイヤーへ転身。ボールを追ったり、壁パス、キープ、フォローなどをする選手へ大変身しましたよ。      *おかげで相手を吹っ飛ばす小次郎ドリブルは封印。

・アメリカの猫とネズミは仲良く喧嘩する。兄弟喧嘩は犬も食わず。・・・何か違うか? 1分後、札幌DFがヘッドで落としたボールがサイドラインを割りそうになる・・・ここで無理してボールをキープせんでも良かったねぇ。スローインを与えるのも嫌だったのか、札幌DFがスライディングでボールをキープ・・・そこに征矢貴裕がチェックに行きボールだけをかっさらう。そして、ファーサイドでどフリーだった征矢智和へクロス。 これまた、技術の高さですよ。雨を含んだピッチ、兄からの速いクロス、DFが目前に迫ってる状況で・・・足元へビタッ!と落とすトラップ技術。止める・蹴るの技術の高さはヴェルディユースならでは。だからこそ、DFのスライディングも余裕で切り返せるんですよ。後はゴール左下へ流し込むだけ。これで3−1。半径1m以内へのトラップは基本ですけど、まぐならきっとトラップがクリアになりますよ。

・手数の少ないサッカーとはこうやるんですね。左サイドで影の薄かった弦巻からのサイドチェンジ。右の裏で待っていた征矢貴裕へどんピシャ。征矢もトラップしてすぐに中央へグラウンダー。俗に言う「最終ラインとGKの間」ってやつですね。このボールにオサマが飛び込んでプッシュ。これで4−1と勝負有り。ゴール後にオサマがユニフォームを脱いで振り回す仕草。もちろん、イエローだけどね。おそらく、ここでイエローをもらったから なのかオサマは選手交代。本来ならDFでストッパーのポジションの金沢。しかし、FW5番金沢へ。その後、GKも中根も登場。1試合に必ず1回は神セーブをする男。うわー、久しぶりだ。

     金沢    智和



弦巻   奥田    三原   貴裕
                  
                  
                  
裕紀   坂口    吉田   マサ


        中根
・これで試合終了。ヴェルディユースとしては史上初の高円宮杯優勝となりましたー。




10/10(月)第16回高円宮杯FINAL
埼玉スタジアム2002

ヴェルディユース
 VS 
コンサドーレ札幌

前−半

後−半

合−計

(裕紀)征矢智和

 岡 揚一

(貴裕)エルサムニー・オサマ

  

(貴裕)征矢智和

  

(貴裕)エルサムニー・オサマ

  


   −おまけ−
ま、そんな訳で個人的に気になった事をいくつか。
・いやぁ、非常に面白い試合でした。柴田サッカー=放り込みの概念を覆した試合でしたね。そもそも、徹底的にリスクを省き、相手の長所を消す効率的なサッカー。札幌相手には繋いでも良しと判断したのだろう。福島でのマリノス戦なんか 完全にマリノスも放り込みだったので、非常に辛い1戦だったよ。あの試合に比べたらそりゃ見事な試合でした。就任1年目であっさりと優勝、こうなってしまうとJユースカップも非常に期待してしまうわね。でも、場所はいつも長居なんだよなぁ。

   −今日の受賞者−
MOM : MF 征矢貴裕         初選出/通算2度目
MOM : DF 吉田啓祐         初選出
MOM : FW エルサムニー・オサマ   4度目/通算5度目
MOM : FW 征矢智和         初選出
MVP : MF 征矢貴裕         初選出
MVP : DF 坂口達也         初選出/通算2度目
MVP : DF 古川将大         2度目
MVP : DF 小林裕紀         2度目


・勝利に貢献した選手にはMOM、まぐが独断と偏見で選ぶのがMVP(まぐろん・バリュアブル・プレイヤー)だ。
征矢貴裕はダブル受賞。そりゃ、当然です。アシストハットトリックですよ。後半の征矢貴裕は誰も止められませんって。大会MVPの活躍ですよ。準決勝でのFKもそうだし。DFの坂口・吉田の2人は最後まで体を張っての大活躍。守備での堅さは凄いっすね。 吉田なんて相手の肩に触れただけで相手が体勢崩してましたよ。ビクともしないガタイは素晴らしい、真っ直ぐ育って。オサマも2ゴール、征矢智和も2ゴールと大活躍。ゴール取らないと勝てないからね。

・他に気になったのは左サイドから良質のクロスを送っているのに決めてくれなかった小林裕紀。 前からフィードの正確性には定評のある裕紀だったが、今日は一本だけアシストになった。実はそれまでも征矢智和、征矢貴裕と2度も外している。征矢兄弟のおかげで勝った試合だけど、征矢兄弟のせいでヒーローになれなかった・・・かわいそうだから奢ってやって。もう一人は右サイドバックの マサ古川。FWからCBのストッパーになってしまった。柴田監督曰く、「複数のポジションが出来る選手になれ」・・・でも、FWが1回DFをやると二度と戻ってこれないことで有名です。 そんなマサもしっかりとCBになってました。この試合でも相手からの一対一を見事な守備で奪っていました。 広島の遊佐を止めた件も足してMVPです。


・柴田さんサッカーの特徴
1.徹底的にリスクを排除   →   故に守備的なサッカーとなる

2.相手の長所を消す為なら、ヴェルディの長所が消えても構わない   →   故につまらないサッカーとなる。(個人の好き嫌いにもよるね。勝利主義者は好きかも。)

3.最終ライン、中盤、前線から90分間プレスし続ける   →   故に体力・運動量の無い選手は干される

4.攻守の切り替えの速さ、たとえ相手陣内に居ても全力で戻る   →   故に守備の出来ない選手も干される

5.我慢、我慢、我慢・・・によるタフさ   →   故に魅了するプレーをチャレンジしなくなる

6.優勝争いする者だけが身に付ける勝負強さ、最後まで諦めない精神力   →   これだけは柴田さんじゃなければ身に付かなかったものだ



・とまぁ、見えないですけどまぐの言葉も添えてありますが非常に好き嫌いの激しいサッカーだと思います。なんていうんでしょうか、部活サッカーとクラブユースサッカーの融合とでも言うのか。とうとう、ヴェルディにもこの波が押し寄せてきました。全世界で流行りつつある「手数の少ないサッカー」ってやつですね。 つまり、FC東京柴田さんの「馬場」らを育てたセクシーサッカーこと「カウンター+サイド攻撃」、勝つ事の大事さを訴えかける部活サッカー小沼氏の「運動量+全力疾走+帝京魂」、そして脈々と語り継がれたヴェルディユースの伝統、志郎様の「足下の技術+アイデア+センス」 ・・・そう、これはこの観戦記の最初に愚かにも述べた「部活サッカー vs クラブユースサッカー」の概念を崩したのだ。もはや、ヴェルディのサッカーは部活をも、クラブユースをも越えた次元に達しているのだ。小沼氏のものを借りて・・・ヴェルディ魂(だましい)のサッカーとでも言おうか。 うん、ハッキリ言って死角無し。Jユースカップも非常に楽しみだ。きっと、倒せるのはマドンナ刺客ぐらいのものだろう・・・何が言いたいんだか分かんなくなっちゃったな。



・ちなみにヴェルディユースの坊主頭は昔から多いですよ。




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